毎週恒例のブラッシングと、最近はブログ主の腕もずいぶんと上がった「ハナクソこじこじ」を敢行したので、例によってたぬー様はおかんむりです。

解放したとたん隠れ家にイン。家猫の撮影にズームってああたvvvvv

階段を下りる際に見上げてもしらんふり。

通りすがりに睨みをきかせます。
「ゆるすまじ……」
2010年の初夏、ノラ生活11年を経たところでお縄、監禁してから数えてみたら3年近く経ってますが、ようやくまあ、寝込みを襲えばなんとかブラッシングができるところまできました。撫で方がお気に召すとゴロゴロ喉を鳴らすことも多くなりました。

でも、いまだに手をかざすと「ビクッ!」と首を竦めたり、ブラッシングの気配を感じるとスタコラと隠れ家にこもったり、調子に乗って撫ですぎるといきなりガブリときたり、長年のお外生活で培われたノラ精神は失っていません。だっこはやはり遠い夢です。

たぬーはお外にいた11年で、当然ながらたくさん病気や怪我を経験しました。他の猫にけんかを挑まれたり、風邪をひくなんざ日常茶飯事。症状が悪化すると、必ずどこかに隠れました。呼べど叫べど姿を現さず、もう死んでるな……とあきらめたころに再び姿を見せたものでした。
多くのノラ猫は自分の体力が弱ると、外敵から身を守るために身を隠します。そして多くのノラ猫はそのまま命を落とします。たぬーは幸いにして怪我や病気を乗り越え、最後は不覚にも人間に捕まるという失態を演じましたが(いやー、捕獲器なしでよく捕まえられたわ)、なんとか今でも生きています。
たぬーが家の中に閉じ込められている現状を幸せと感じているかどうか、それは人間には計りようがないし、たぬー本人も考えたことはないと思います。ただ、毎日エサだけは欠かさず当たるし、見知らぬ猫におそわれる心配はないので、昔よりはましに感じてほしいと飼い主は思っています(女王様には意地悪されるけどね!)。
たぬーが暮らしていたテリトリーの空き地はもうありません。今は大きなマンションが建てられている最中です。
同じように住む場所を失い、放浪する猫やたぬーのように保護(捕獲)される猫もいるでしょう。新天地を見つけられる子は幸運。おうちの子になれた子もまあ(たぬーの弁によれば、きっと)幸運。でも、行き場をなくして行き着く先が保健所、という状況は、100匹の同じ境遇の猫がいればそのうちの99匹にとっては不幸です。
たぬーを捕まえようなんて夢にも思わなかった昔の話です。たぬーは、骨折して身動きできなかった間は長いこと息を潜めて身を隠し、エサも食べずにひたすら傷を癒すことに専念しました。その直前に産んだ子はたぶん母猫から乳をもらえず死にました。
栄養が取れなければ当然乳は出なくなります。たぬーにとって、無理して人前に弱った己をさらし、エサをもらって子猫に乳をやることよりも、まず自分が生きながらえることが大事だったのです。
風邪をひいたときも何日も現れませんでした。エサにありつくためには人目や他の猫に脅かされる可能性のある場所にでなければならず、弱った身体では窮地に追い込まれても逃げ切れないと考えるからです。
たとえ怪我を負っていたとしても、簡単に人に捕まるようなノラ猫はいません。たぬは一度も「怪我してるの痛いの」とかふざけたことをぬかしたことはありません。いるとすればすれは長年エサやりさんに外で飼われていた半ノラか、捨てられた家猫です。
保健所には時々「負傷猫」が収容されます。「善意の第三者」が「怪我をした猫」を哀れに思い保健所に持ち込むか、怪我や病気で体力を奪われ、抗う力もなくただうずくまっているところを通報を受けた役所の担当者が連れ帰ったり。
状況はさまざまですが、もとが「負傷猫」なのでその大多数は治療もされずに収容中に力尽きるか、負傷を理由に譲渡されず処分されるかのどちらかです。
捕獲器も使わずに捕獲される猫は、けして人に害をなすノラ猫ではありません。人間に見捨てられた元飼い猫です。エサやりさんにご飯をもらっていただけの子も、簡単に捕まるほど人馴れしているなら立派な「飼い猫」です。
それでも、保健所は持ち込まれた彼らにとって怪我を治療して暖かい寝床を提供し、新しいおうちを見つけてくれる天国のような場所ではありません。あなたが不憫に思ってかけた電話一本で、その子の命運は尽きてしまうのです。
たしかに北海道の冬は過酷です。このままここにいたら……と心配になるのはあたりまえです。
でも、自分の家に連れて帰るのならいざ知らず、道で具合が悪そうにしている子を見かけても、絶対に保健所にだけは通報しないでください。「あの猫はきっと元気で幸せな生活を送れる」と想像するあなたの脳内の光景は現実とはなりません。
「いいことをした」と悦にいるあなたの自己満足が、
かなりの高確率で彼らにとどめを刺します。 ────そういえば、一度だけたぬーが私に「ついてこい」と言ったことがあります。ニヒルな笑みを浮かべ(てねーよ)、こっちきな、とクビをくいっと(しねーよ)。
え?私を呼んでらっしゃる?
恐る恐るついていった先は屋根の落ちた廃屋の中。どうやって奥の押し入れ(の残骸)までたどり着けと?
しかしたぬーは廃墟の残骸の頂きにすっくと立ち、私が足を踏み入れるのを待っています。
苦労して、本当に苦労して、腐った床を踏み抜いたり斜めになった畳を乗り越えたり、こりゃあクギの一本や二本刺さったって誰にも文句言えやしねえ、と冷や汗かきながらついていきました。
結論からいうと、必死でたどり着いた先には何もありませんでした。押し入れの残骸に腐りかけたダンボールがいくつかあるだけ。
しかし数日後、たぬーはそこで子猫を産み落としました。さらに数日たってぴゃーぴゃー子猫の声が聞こえ始めました。
たぬーさん、ようやく私に心を許してくださったのね。
週末、まさか呼んだからには子猫をちらっと覗いても文句言わないわよねvvv
とワクワクしてはせ参じましたら……とっくに子猫を連れて引っ越した後でした……。
それがねえ、たしかこの子たち(この最後の年だったと思う)。

いや、この前の年だっけ……?
どっちにしろ、猫はイジワルもするんだって身に染みて分からせてもらいましたよ、たぬさん。