不在の耐えられない重さ。

 少し前から、たぬは私の部屋で昼寝をすることが多くなった。羽毛布団に包み込まれる感じがいいらしい。それに怖い怖い女王様が昼間はここには来ない。
 たぬがフカフカの羽毛布団に埋もれていると、不思議とちーがやってきて、少し離れた場所に陣を張る。ばんはその勢力図に割り込むこともあるし、より離れたイスの上で丸くなることもある。本当に不思議で、たぬがいない時にちーとばんの2匹が私の部屋で昼間一緒にやすむことは滅多にない。

 あんなに強面なのに、たぬの毛はふわふわと柔らかかった。
 あんなに強面なのに、ずんぐりしたおててがまるでドラえもんみたいだった。
 あんなに強面なのに、ご飯を要求して上げる声はとてもか細くかわいらしかった。

 一日の大半を寝て過ごし、夜中によく徘徊しては「あーーーあーーー」と細い声で誰かを探していた(たぶん殿方を)。あまりにも叫びっぱなしだからよく「たぬ、うるさい!」と叱った。
 中途半端に長毛の血が入ってるらしく、しっぽが短毛の「シュッ」とした感じじゃなくて、ひらべったい貧相な形をしていて、常日頃「サナダ虫みたいな形だなあ」と思っていた。

 そういえば、一月くらい前からたぬの声をあまり聞かなくなった。ご飯を食べなくなって体力はどんどん落ちていったけれど、白い毛は相変わらずふさふさで、黒い毛は元気な頃と変わらずつややかだった。
 でもその毛に包まれた身体は徐々に痩せていき、背骨や骨盤の形が直に分かるようになった。
 腰のくびれが異様に目立ってきた。腹水がどんどん溜まっていったせいだった。
 何度も何度も出産して、たるんたるんになったお腹は、ゆったりのっそり歩いていても左右によく揺れた。年とともにお腹の毛が薄くなって、地肌のピンクが透けて見えた。まるでピンク色の求肥みたいだった。その柔らかなお腹に容赦なく悪い水が溜まっていった。

 最初に350ml抜き、一週間後に550ml抜いた。
 抜いても抜いてもどんどん溜まる。それでも抜けば一時は楽になるし、食べなくても点滴で水分さえ与えていれば、我が家で静かな最後を迎えられると思っていた。

 でも2回目の腹水を抜いたその晩、脱水がひどくて点滴をした後から吐き戻しが始まった。最初は胃液、次からはなんだか分からない赤黒い液体を。
 弱った身体で一生懸命吐くもんだから、勢い余ってふらついて、吐いたものを踏んでしまったり、その上に座り込んでしまったり。
 朝の5時半に私が寝ているベッドの傍らにきて、私を一瞬見つめたあと盛大に吐いた。たぶん「もう限界だ」と言いにきたのだ。
 病院が開いたら終わりにしてもらおうとその時決めた。そして絶対にやらないと決めたはずだったのに、たぬをケージに閉じ込めた。家中を血反吐だらけにする訳にはさすがにいかなかった。

 前の晩からの一部始終をばんがずっと見つめていた。たぶん一睡もしなかった。
 9時になって、ばんに見送られてたぬを病院につれていった。私のへたくそソなフルートでも気に入ってくれて、吹き始めると必ずキャットウォークから降りて聴きにきてくれたから、ほんの5分の移動時間だけど、車の中ではフルートの曲を流した。

 病院に着いてものの15分。電話しておいたからすべてが早かった。
 薬を打たれて、気持ちよさそうにゆっくりと瞼を閉じるのと同時に、ぜーぜーはーはー苦しげなたぬの息が静かになった。

 その日のうちに早々とお骨にして、その晩まではわりと平気だった。
 でも、翌朝目覚めたとき、熟睡できたのが悲しかった。夜中に「あーーあーーー」徘徊するたぬがいないから、(女王様に叩き起こされる以外は)実にゆっくり眠れた。

 家の中がとても静か。「あー」も鼻を詰まらせたような「ぐふっ」も聞こえない。
 静かすぎて「たぬの不在」がずっしりとのしかかってくる。
 残された3匹に「なんか喋って」と懇願するけれど、悲しいかな猫とはなかなか鳴かない動物なのだ。

 たぬ18歳。まさかここまで生きるとは思わなかったけれど、もしかしたら30まで生きるのではとも思えた不思議な魅力と生命力に溢れた猫だった。
「長患いは性に合わぬ」とばかりさっさと逝ってしまった漢らしさがちょっと恨めしい(♀です念のため)。


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プロフィール

Author:ふぅ
「ふぅ」です。うしろの「ぅ」はちっちゃい「ぅ」です。生まれも育ちも北海道。もともとは主にツイッターでぶつぶつ呟いてましたが、140字制限がもどかしくてこっち来てみました。でも緊急性のあるものは変わらずツイッターで呟きます。アカウントは@nekodasukeです。フォローよろしく。
【猫辞典】は完全オリジナル。自由きままに猫の生態を書き連ねてます。ツイッター発祥なのですべて原則140字以内です。
ブログタイトルの『猫っツラにデコピン!』は略して『ねこぴん』とでも読んでいただければうれしゅうございます。

ではどうぞごゆっくり。

メンバー紹介

元捨て猫、現女王様。名前はふう、通称ふーこ2000年の晩秋、雪が降り始める直前に保護。身体は一番小さいけれど一番の権力者。ある意味我が家は彼女の独裁政権下。超ミニサイズ(ミニというより寸足らず?)のもうすぐ17歳♀。長毛ミックスなんだけど何が混じってるのかは不明。



名前は千明通称ちーこまたは末(すえ)。2009年(たぶん)4月生まれの8歳♀。保健所に持ち込まれた5匹兄弟のうち一番の美人にゃんを拉致して帰ったつもりが、いつの間にか「こいつ実はちん○んあるんじゃねえの?」疑惑を経て我が家のお笑い&破壊担当班長に就任。



本名たぬき通称たぬ。2010年夏、我が家の一員とするため無理やり捕獲した元ノラ猫。ただし最初は外飼い猫だったと思われる。(推定)1999年初夏生まれの18歳♀。種族保存の本能に満ち溢れ、こんな男らしい顔つきのわりに非常にモテていた。2017年7月2日、病気発覚からわずか1ヶ月、ジェットコースターのような怒濤の闘病を経て潔く永眠。



本名ばん通称ばんばん、ばんこ、ババンがバン他。2014年夏、伊達のおまつりにやってきたおばあちゃん思いの男子高校生の通報によりレスキュー。むちゃくちゃ薄汚れていたらしいが捨て猫なのか元ノラなのかは不明。警戒心のかけらもない無防備なおバカさん。ようやく3歳。めんどくさいので推定誕生日はたぬと一緒。


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我が家の常備品

★もう年なので、これを飲まなければ朝起きられません下瞼は重力に負けます毛穴は縦に開きます俗に言うたるみ毛穴っつーやつですわ夜寝る直前に飲むのがコツです朝飲んでも効くのは午後になってからですつまり半日は役立たずっちゅーわけですわvvわたしは365日飲みます毎日飲むので箱買い当然箱買い上等もはや中毒???

★今回はもう、ほんとにコレにお世話になってます。パルボは熱でもアルコールでも死にません。塩素かコレです。塩素は主に洗濯に。バイオチャレンジは主にお掃除に使ってます。ガンガン使ってるのでガンガン減っていきます。お財布痛いですけどしょうがないです……。

★メーカーのみなさま、申し訳ございません。我が家ではこれをうんP一時収納箱として利用させていただいております。抜群の臭い遮蔽率!猫飼いの必需品と考えております。これを使うようになってから、うんP処理がものすごく楽ちんになりました♪

★いろいろ試したけど、我が家ではこれしか使ってくれませんでした……。よく固まってうんこしっこ取るのも楽なんだけど、重たくて運ぶのが大変なのが玉にキズ。なのでほとんど通販で購入。タイミングによって値段の幅がものすごい。

★お猫さまの数だけトイレは必要(ほんとは+1が理想)。我が家はこれ3つを常設。保護猫がいる間はさらに増やします。安いし洗いやすい。ものすごく小さいけど、みんな上手に使ってくれてます。たまにはみ出すヤツもいるけど(笑)。

★お猫さまの便秘を放っておくと、いずれ毎度病院で掻き出してもらわなきゃならなくなると言われました。うちの女王様は病院でこれを勧められて食べ始めたら、とたんに快食快便になりました。うんPの量が3倍くらいになってびっくり。

★週に一度のブラッシングではこれ使ってます。最初は逃げ回るたぬーも、いったん背中にこれを当てられるとふにゃんと腰砕け(笑)。でも角が当たると傷つけかねないので扱いは慎重に。

★新居に引っ越す前に徹底的にテストしました。麻・カーペット・木、そしてこのダンボールの爪とぎを買って来て並べたところ、これ以外には全く興味を示しませんでした。引っ越してからもちゃんとこの爪とぎだけで爪とぎしてくれます。おかげで壁紙破られずに済んでます(笑)。

★2年間使い倒したカメラが壊れたというか壊したというか……。マクロ機能がさらにアップしているらしく、末の鼻の奥までバッチリです。カメラを選ぶときのこだわりは「同じ電池を使える」ということ。電池が同じなら充電器も同じです。コストダウンにつながります。でもだんだん選択肢が少なくなってきた……。写真はゴールドですが私が選んだのはどピンク。カメラは必ずピンクと決めています。女らしさを欠片も持ち合わせていない私の唯一の自己主張かな。ただ単に派手好きという説も(笑)。

★お猫さまのお世話で疲れたお肌もこれさえ塗れば一発で……上がればいいんですけど(笑)。地球の重力に引っ張られて下がるばっかりですが、なんとかがんばって抗ってます。上がれ~~上がれ~~。

★北海道にノミはいないっていう獣医さんもいるけれど、用心のために毎月みんなにつけてます。保健所にいる子を引き出す際にも使うので常に常備してます。うちの母、ノミにもアレルギーなんですわ。ここ、すごい安い……っ。

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