札幌の動物管理センターの件。
まだまだぼっちゃんが若かりし頃、草木・花の芽吹く春の陽気に誘われて裏口から脱走してしまったことがありました。早朝、外での一服を終えて家に入ろうとした父親はまさかドアのすぐ向こうにぼっちゃんが潜んでいるとは知らず、不用心にも一気にドアを開けはなってしまったのです。
「ねこ! 待ちなさい! ねこ逃げた!」
父はとても照れ屋で、飼い猫といえどペットをニンゲンのような名前で呼ぶことに躊躇いがあったようです。ぼっちゃんは我が家に(父が)連れてきた当初から(父の)最後までずっと「ねこ」と呼ばれていました。
「ねこ! ねこ!」
必死に捜すこと10数分。ぼっちゃんは同じブロック内の数メートル離れた車道っぷちで捕獲されました。必死の形相だったはずの父から逃げず、抱っこされて戻ってきました。田舎とはいえ車の往来がけっこうある表通りが近く、もし万が一のことがあれば父は自分を許せないと必死だったのでしょう。
札幌の動物管理センターで不幸な事件がありました。警察が保護していた猫をセンターに送ったところ、首輪をしているので飼い猫らしいという情報が伝わらず、ケージ越しに威嚇したため獣医師によって殺処分されてしまったというのです。
私はまず、ローカルとはいえ夕方のニュースで流れたことに驚きました。首輪をした猫が保健所に入ってくることなんてざらだし、迎えがくることなく処分もされています。保健所はけしてノラだけを処分しているわけではないのです。ハチはハーネスつけてたし、らいおん丸はサマーカット直後だったし、怪我が癒えてのち海を渡って幸せになった子もまた、保健所に入ってきたときは首輪をしていました。
おそらくなんらかの形で飼い主が問い合わせてきたか、過去に問い合わせがあったことが判明したか、首輪を外してみたら裏に住所が書いてあったか、などなどで飼い主に連絡をすることになり、発表せざるをえない状況に発展したのでしょう。
でも、繰り返しますが、こんなことは日常茶飯事です。むしろ札幌を始め道内の保健所はがんばってくれているほうなのです。福移支所などは夏場の間、土曜に開庁して犬猫の譲渡率向上に貢献してくださってます。
警察から「首輪をしている」という情報を伝達されたのにも関わらず、担当獣医師に伝えなかったミスは重大です。動物になれているはずの獣医師が、威嚇されただけであっさり処分を決め手しまったのも遺憾です(12歳の子なので、高齢で譲渡が難しいという判断も処分決定の理由になったのかもしれません)。
ニュースからは5月の31日に警察から保護を依頼され、処分したあとに飼い主が判明した、としかありません。警察がいつどこで保護をし、どのくらい「遺失物」として留置し、保健所に委託したのか。
また、その間に飼い主からの問い合わせはなかったのか、今までどうやって探していたのか。行政はどうやって飼い主を見つけたのかがまったく見えてきません。
警察に保護されていたようなので少し調べてみました。
道警のHPには「落とし物情報」というものがあり、その中に「動物」もあります。「います」ではなく「あります」です。遺失物なのであくまでも犬猫うさぎ亀インコミンク(……まあいろいろいらっしゃいますこと)はすべて「物」です。
収容期間を拝見すると、概ね3ヶ月程度のようです。では今回処分された猫は警察に(どういう形かは分かりませんが)3ヶ月収容され、収容期限が来たか満員になって押し出されたかでセンターに送られたのでしょうか。
もし3ヶ月間警察にいたとしたら、そこでお世話してくださった方がいるはずです。「この子は飼い猫のはずです」と必ず伝えたでしょう。それだけ長いこと面倒をみてくれていたら、情が移っていたかもしれません。
「この子は首輪をしていますので飼い猫なんです。飼い主さんが迎えにくるまでなんとか生かしてあげられないでしょうか……う……っ」と涙を堪えてセンターに連れてきた道警の職員さんを想像してみてください。彼の愛情は「首輪をしているので飼い猫です」が伝わらなかったばかりに行き場を失いました。
いや、これはほんとに想像ですけどね。実際には警察には動物を収容する施設がなく、サイトに情報を掲載はしているけど収容ははなからセンターという段取りになっている、というところですかね。それにしても収容してすぐの処分は解せません。
そしてここが大事。12歳のおぼっちゃまが行方不明になって警察に捕まり、センターに送られて獣医師にケンカを売り処分されてしまうまで、飼い主はなにをしていたのか。これは時系列をきっちり明らかにしてもらわないと責任の所在をはっきりさせることが適いません。逃がした飼い主が責められるべきか、伝達(痛恨!)ミスを犯したセンターの職員が責を負うべきか、簡単に処分してしまった獣医師を糾弾すべきか、それともこの「遺失物・拾得物」→センター移管のシステムがそもそもちゃんと機能していないのか。
今のところ「逃がした飼い主が悪い」派と「処分した行政が悪い」派と世間の猫好きと猫毛嫌い派合わせて意見は2分されているかと思います。背負うべき咎を持たない人にあらぬ疑いをかけないためにも、テレビカメラの前で頭を下げるだけで終わらせず、ちゃんと経緯を説明してほしいものです。動物愛護の機運が高まっているからあんなパフォーマンスしたんですよね?
犬も猫も、飼い主がいる子もそうじゃない子も、毎日たくさん処分され続けています。家族と引き離されてたった数日、あるいは数時間。法で定められた期限がきたから。施設がいっぱいになったから。週末だから。長期休暇取りたいから。譲渡するとクレームくるかもしれないから。理由はたくさんあります。
そんなこの国でなぜ、「飼い主がいる猫を誤って処分してしまった」ニュースをあえて今取り上げる意味が、冷たいかもしれませんが私には分からないのです。
※記事掲載後、コメント欄にて事の経緯が発表されている旨をお知らせいただきました。
こちらに掲載されています。
「センターからのお知らせ」を待っていた私はこの報道発表を見つけられませんでした。
とりいそぎ経緯説明文を一読しての感想です。
・処分されたのは12歳のオス猫のはずが、収容時には子猫と誤認→子猫ならなおさら威嚇しても一時的と思えるのでは?
・そもそも処分された猫が外に出た経緯(これ重要)が記載されていない。
・警察はやはり「遺失物」として「保管」するわけじゃなさそう。それとも子猫だと思ったから「センターに言って処分してもらおう」的な対応なのか。
・一日で処分したのか。マジかよ……。
・これ、獣医が一番悪いって流れになってない? 思い込み?
・全頭の預かりリスト作るってほんとに可能なの? 自分らの首絞めてるような気が。
・飼い主に対する誠意って? 所詮、お役所的には「器物損壊」でしょう。
・記事は「遺骸」でした。経緯説明文は「遺体」です。
・ほんとに「4」以降の対応をするなら職員増やさないとみなさんオーバーワーク。そして獣医師はちゃんと臨床経験積んだ人を入れてください(役所の獣医さんは往往にして臨床経験ない方がいらっしゃいます。ここの獣医さんはどうなのかなあ)。
【結論】
いったん外に出したら無事に帰ってくるのは奇跡。
───────なんだかハー。もやもやは続く……。
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